ロックとお酒とバイクを愛するロマネスクのマスターは、レッド ツェッペリンとスズキのバイクがお気に入り!

山吹

山吹

画像の説明

今から9年ほど前のこと。

ある高円寺在住の俳人が、泉鏡花の「山吹」を読んでみたい、と言うのです。
私が鏡花全集を所蔵していることを知ってたからです。

私は、全集が欠けるのを恐れて貸すことは断りましたが、
コピーして綴じたものを差し上げました。
山吹の花一輪が咲いた小枝を添えて・・・・

・・・その日私は 高円寺の「そこそこ」という小さな店で
独りで一杯やってました。
いわば、私の隠れ家のような居酒屋。

主人は一流料亭やホテルを転々とした腕のいい親父だったのですが、
いつ入っても、店はガラガラ。
だから、落ち着いて飲めたんだけど・・・・

主人は盛り付けのセンスも最高で、毎日出勤途中の公園から
使えそうな草花を摘んで来るのだそうです。
その日のお刺身の飾りが山吹だったわけです。

私は店を出たその足で、泉鏡花の「山吹」に山吹の小枝を添えて俳人に
届けました。
彼が大喜びしてのは、言うに及びません ココまでは善い話なんですが・・・

私は「そこそこ」の主人に「こんな良い店が繁盛しないのは看板が悪いからだ」
といった事があります。
店は路地から奥まった所に有り、表通りに出している置看板は
手製の貧相なモノだったんです。

主人は私のお酒の好みも料理の好みも熟知していました。
でも、「申し訳ない。昨日売り上げ悪くて、備前雄町の酒買えなかったんだ」
などいう事がしょっちゅうだったほど、経営は苦しかったみたいです
年の瀬に「そのうちに看板、作ってあげるよ」とつい約束してしまったんです。

お正月が明けて、私は秋田のおみやげの「味噌漬け」を持って
「そこそこ」を訪ねました。店は閉まっていました。
次ぎの日も開いてません

3日目に「そこそこ」の前で常連だった女の子に出くわしました。
そして、すべての事情を聴きました。

主人は、元旦に店内で首を吊って亡くなっていたそうです。
・・・・・主人に渡すことが出来なかった「味噌漬け」は
今だに冷蔵庫にあります。

私にとって果たせなかった約束が「山吹」の思い出です。
ちょっと、湿っぽくなってごめんなさい。

そして、私にとって「山吹」には、どうも、いろいろな物語りが
詰まっているように思えてなりません。

お酒の目次に戻る___エッセイの目次に戻る___HOMEに戻る___おつまみの目次へ

powered by Quick Homepage Maker 4.16
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional